iPhone や iPad では、バックアップをパスワードで保護できます。保護すると、データは暗号化されたバックアップとして保護されます。
iPhone のバックアップパスワードとは?
iPhone や iPad のバックアップパスワード(iTunes バックアップパスワードと呼ばれることもあります)は、iOS デバイスを暗号化形式でバックアップするときに設定します。パスワードはデバイスに安全に保存されているため、バックアップが作成されるたびに、暗号化されたバックアップが生成されます。
バックアップを保護すると、そのバックアップの内容にアクセスするには、バックアップパスワードを覚えておく必要があります。このパスワードは、iPhone のパスコードや Apple ID のパスワードとは別に設定します。パスワードは自由に設定できますが、Apple ID をリセットしても、バックアップパスワードを復元することはできません。

iTunes でバックアップパスワードを設定する
iPhone のバックアップパスワードは何のために必要ですか?
バックアップパスワードは、iPhone のバックアップを読み取る、バックアップから復元する、または iPhone のバックアップパスワードを削除するときに必要です。
新しいバックアップの作成、iCloud や Apple Music のデータへのアクセス、アカウントへの新しいデバイスの追加、デバイスのリセットには必要ありません。
Apple は長年にわたり、暗号化バックアップを保護するためにいくつかの異なる形式を使ってきました。最後の大きな変更は iOS 10.2 のリリース で行われました。iPhone Backup Extractor は、あらゆるバージョンの暗号化された iTunes バックアップに加えて、他のソフトウェアで作成された iOS バックアップにも完全に対応しています。
バックアップをパスワードで保護すべきですか?
iPhone や iPad のバックアップにパスワードを設定すると、データを保護できるため、おすすめです。バックアップのセキュリティが高くなるため、ヘルスケアデータなど、通常は除外される より多くのデータ を安全にバックアップに含められます。バックアップから復元する必要が生じたときにも役立ちます。
バックアップパスワードをリセットして新しいバックアップを作成する方法
バックアップパスワードを忘れても、バックアップの内容にアクセスする必要がない場合は、新しいバックアップで上書きできます。
- iOS デバイスで
Settings→General→Resetの順に進みます。 Reset All Settingsをタップし、iOS のパスコードを入力します。- 画面の指示に従って設定をリセットします。ユーザーデータやパスワードには影響しませんが、画面の明るさ、ホーム画面のレイアウト、壁紙などの設定はリセットされます。暗号化バックアップのパスワードも削除されます。
- デバイスを iTunes にもう一度接続し、新しい暗号化バックアップを作成します。

iOS デバイスで「すべての設定をリセット」を実行する方法
この操作を行うと、既存の iPhone バックアップと、そこに含まれるすべてのデータ が上書きされるので注意してください。
紛失した iPhone のバックアップパスワードを復元する方法
iTunes バックアップのパスワードを紛失した、または忘れた場合は、復元を試みるためのいくつかの方法があります。
1. 心当たりのあるパスワードを試す
まず、使った可能性のあるパスワードをいくつか試してみる価値があります。iTunes で複数のパスワードを試しても、ペナルティはありません。ただし、確認ごとに少し時間がかかります。iOS バックアップに初期設定のパスワードというものはありません。
次のようなものを使っていたかもしれません。
- iTunes、Apple ID、または iPhone のパスワード
- メールのパスワード
- コンピュータのログインパスワード
password、1234、letmein、0000など、単純なもの
Apple が自動的にバックアップパスワードを設定することはありますか?
パスワードを紛失した方から、iPhone が自動的に未知のパスワードを設定したに違いない、というご連絡をよくいただきます。10 年以上、1,000 件を超える復元の成功事例のなかで、ユーザー本人にとって本当にわからないパスワードだったケースは、一度もありませんでした。
過去は異国のようなものです。昔の人は、パスワードの選び方が違うのです。
パスワードはデバイスで設定されるもので、コンピュータが設定するものではありません。デバイスを他の人が購入または設定した場合は、その人にパスワードを確認する必要があるかもしれません。
2. macOS のキーチェーンを確認する
Mac を使っていて、その Mac で iTunes バックアップパスワードを設定した場合は、コンピュータのキーチェーンにパスワードが記録されている可能性があります。
すべての Mac に付属している「キーチェーンアクセス」アプリで確認できます。
⌘ Cmd+(スペース)で Spotlight を開き、「キーチェーンアクセス」と入力して⏎ Enterを押し、キーチェーンアクセスを起動します。- 左側のカテゴリサイドバーで「パスワード」をクリックします。
- ウィンドウ右上の検索ボックスに「backup」と入力します。
iOS BackupまたはiPhone Backupという名前の検索結果をダブルクリックして、保存されているパスワードの項目を表示します。- 「パスワードを表示」にチェックを入れると、パスワードが表示されます。

キーチェーンでバックアップパスワードを検索する
残念ながら、Windows ユーザー向けにこれと同じことを簡単に行う方法はありません。
3. iCloud にバックアップし、デバイスを消去して復元する
iTunes バックアップのパスワード設定をデバイスから取り除くための、最後の手段もあります。設定で iCloud バックアップをオンにしてバックアップを作成し、デバイスを消去して復元します。
この方法は、特にデータ量が多い場合や回線が遅い場合には時間がかかるため、できれば避けたい手段です。この方法を試す場合は、iCloud バックアップの作成ガイド をご覧ください。

iCloud にバックアップする
4. バックアップパスワードをブルートフォース攻撃で解読する
Apple は、暗号化バックアップの仕組みについての 技術的な詳細 を公開しています。簡単に言うと、最近の iOS バックアップでは 1,000 万回の反復 を伴う AES-256 が使われています。そのため、正しいパスワードであっても、1 つのパスワードを確認するだけでかなり時間がかかります。hashcat のようなツール で多数のパスワードを試すのは、非常に遅い作業です。hashcat で使うためのハッシュは、無料の rictl ツールを使って、次のコマンドでバックアップからエクスポートできます。
$ rictl backup info -u 00009034-002E650A01AE001E | grep -i hash
Password Hash: $itunes_backup$*10*1B79213926050E5A3ACCD9EB2FDF8F43FAFD1E5F57CA51E5950D4AF6FED663D3FD7E183923F605F6*10000*5FC56B80AA8D8A79B78C9F4CD5CEEFB4C213D495*10000000*565B837B6E69B7F4786114E3835971AE0E2E5979
パスワードが 8 桁で、英語の大文字、小文字、数字のみを使い、記号は含まないと仮定すると、組み合わせは 218,340,105,584,896 通り(628)あります。
1,300 ドルの GPU GeForce 1080 Ti を使うと、1 秒あたり約 100 個のパスワードを試せるため、そのパスワードの解読には約 6 万 9,000 年かかる計算になります。宇宙の熱的死よりははるかに前ですが、それでもまだ先の長い話です。1 基 5,000 ドルの Nvidia K80 GPU を 4 基搭載したマシンを使えば高速化できますが、10 倍に改善したとしても約 1 万年かかり、消費電力も莫大になります。
以前のバージョンの iOS では、次のように、はるかに弱い暗号化でバックアップが作成されていました。
| バージョン | 1 秒あたりの試行回数 | 単純な 8 桁のパスワードの解読にかかる時間 |
|---|---|---|
| iOS 10.2 以降 | 100 | 6 万 9,000 年 |
| iOS 10.0 - 10.1 | 6,000,000 | 421 日 |
| iOS 4 - 9 | 150,000 | 46 年 |
したがって、実用面では、パスワードの形式についておおよその見当がついていて、数百から数千回の試行で見つかるような場合には、復元できる可能性があります。
ASIC や量子コンピュータでパスワードの復元を高速化する方法
量子コンピュータや専用ハードウェアならどうなのか、と思われるかもしれません。確認してみましょう。
量子コンピューティング のリソースを利用できる大学と協力することを考える方もいるでしょう。この技術の驚異的な力を謳うクリックベイト記事は数多くありますが、強力な暗号を解読することが格段に容易になるわけではありません。
この件については、2 つの有益な資料があります。1 つは この冷静な論文 で、The Register がうまく要約しています(「Grover のアルゴリズムで SHA-256 を解読するには、約 1032 年が必要」)。もう 1 つは それほど冷静ではない記事 で、ダイソン球 を建造して太陽が放射するすべてのエネルギーを集めたとしても、解読は難しいかもしれないと述べています。
一般的な量子コンピュータよりも速い可能性がある別の方法として、ASIC を使う 方法があります。これは基本的に、解読したい暗号アルゴリズム専用に設計されたカスタムハードウェアです。すべてが SHA-1 か SHA-256 を使っているように聞こえますが、実際には暗号で使われるパラメータが重要です。つまり実用面では、汎用のデバイスを使うことはできず、iPhone のバックアップのアルゴリズム専用のものを作る必要があります。この場合、iPhone のバックアップでは SHA-256 が 1,000 万回反復されます。優れた ASIC は 10 万ドル未満で作れるかもしれませんが、どれだけ速くなるかは予測が困難です。仮に 1 万倍速くなったとしても(実際にはそうなりませんが)、それでも遅すぎます。
結局のところ問題は、復元に 25 万ドルの価値があったとしても、まともなパスワードを突破するためのコストははるかに高いことです。一生のうちに成功する確率が、よくても 1 パーセントの何分の一かという挑戦に、住宅ローンに匹敵する額を投じたいと思う人はほとんどいません。
ブルートフォースの成功確率がこれほど厳しいことを踏まえると、紛失したパスワードを復元したり、記憶を呼び起こしたりするには、体系的な手順を踏むのがよいでしょう。復元の価値が十分に大きい場合は、次のような手順をおすすめします。
すべてのデータを凍結して、誤った上書き、削除、変更を防ぐ
- コンピュータ用の新しいハードディスクを購入し、所有しているすべてのデバイス(コンピュータ、ノートパソコン、Time Machine デバイス)からすべてのディスクと USB メモリを取り外して、隔離する
- モバイルデバイスを新しいものに交換し、現在使っているデバイスを隔離する
- 使っているすべてのオンラインストレージ(Google ドライブ、Dropbox、iCloud Drive など)をダンプしてアーカイブする
記憶を呼び起こす
- 当時の写真を見返し、当時使っていた機器や環境を思い浮かべる
- iPhone Backup Extractor を使って当時のメッセージの履歴を調べ、誰と何について話していたかを確認する

「メモリー」で思い出を呼び起こす
パスワードの候補を徹底的に探す
- macOS、iOS、Google のキーチェーンのパスワードをすべてダンプして、パスワードリストに加える
- パスワードマネージャのパスワードをすべてダンプして、パスワードリストに加える
- アーカイブしたすべてのディスクと USB メモリをスキャンし、パスワードのアーカイブや、記憶のきっかけになりそうなメッセージ、写真、メモの項目になりうるあらゆる形式のファイルを探す
- ディスクとデバイスのイメージに対して、削除されたデータを探すため、セクタ単位で入念に testdisk のスキャンを実行する
5. 迷ったら、ご連絡ください
サポートチームが、場合によっては紛失したパスワードの復元をお手伝いできます。以下のサポート窓口までお気軽にお問い合わせください。
